無駄を排除するほど、人生は豊かになるのか

人生の選択肢

コスパやタイパを考えれば、人生も最短距離で進めるほうがよい。

 

必要なことだけを学び、余計な失敗をせず、できるだけ早く目指す場所へたどり着く。それができれば、確かに効率的です。

私にも、たどり着きたい場所があります。できることなら、遠回りをせず、そこまで最短距離で進みたいと思っています。

 

けれど、これまでの人生を振り返ると、どうにも寄り道ばかりでした。

 

一見無駄に思えた経験が、何年も経ってから、思いがけない形で今につながっていることもあります。

人生から無駄を排除するほど、私たちは本当に豊かになれるのでしょうか。

 

昔のワインの仕事が、何十年後の今につながった

若い頃、私はワインに関わる仕事をしていました。

仕事を通して産地や造り手について学び、たくさんのワインに触れました。

 

けれど当時は、ワインを資産として持つことなど、考えたこともありません。

そこで得た知識や経験が、将来どこへつながるのかも分かりませんでした。

 

その後、私はワインとは離れた仕事に就きました。あの頃に身につけた知識や経験を、日常ではほとんど思い出さなくなるほど、長い時間が経ちました。

 

けれど今、私はワイン投資に取り組んでいます。

ワインを保有し、時間をかけて価値が育っていく過程を楽しむ。それは資産形成であると同時に、今では人生の楽しみの一つになっています。

 

かつて仕事として向き合っていたワインと、こんな形でもう一度出会うとは、当時の私は想像もしていませんでした。

若い頃にワインの仕事をしていた自分と、今の自分。

長い間離れていた二つの点が、何十年もの時間を経て、思いがけない形でつながったのです。

 

若い頃に学んだワインのことと、その後に関心を持った投資や資産形成。別々だった点がつながった先に、今取り組んでいる「ワイン資産」というテーマがあります。

 

ワインを持つという考え方については、こちらの記事にまとめています。

ワインを持つという愉しみ―はじめてのワイン資産ガイド―
ワインは飲むだけでなく、熟成を待ち、贈り、売却する選択肢もあります。ワイン投資の基本からプリムール、価値が残るワイン、保管、自分の基準で一本を選ぶための視点まで、初心者向けに紹介します。

人生の点は、あとになってからつながる

「コネクティング・ザ・ドッツ(Connecting the dots)」という言葉があります。

過去に経験したことや夢中で取り組んだことが一つひとつの点となり、あとになって思いがけない形で結びつき、一つの線になるという考え方です。

 

ただし、将来を見ながら、今の経験が何に役立つのかを正確に予測することはできません。

私も、ワインの仕事をしていた頃に、

「この経験を何十年後かのワイン投資につなげよう」

と考えていたわけではありません。

点がどこへつながるのかは、その最中には分からないものです。過去を振り返ったとき、初めて「あの経験がここにつながっていたのか」と気づきます。

 

夢中で取り組んだことが、数年後、まったく違う形で役に立つことがあります。

今は何の意味も感じられない経験が、未来の自分を支えることもあるでしょう。

だからこそ、目の前の時間を「役に立たない」「無駄だ」と、急いで切り捨てなくてもよいのだと思います。

すべての経験が役に立つとは限らない

もちろん、すべての経験が、将来分かりやすい成果につながるとは限りません。

「今の苦労は、いつか必ず役に立つ」

そう信じられれば前向きになれますが、すべての伏線を、きれいに回収してくれるわけではありません。

何にもつながらないように見える経験もあれば、費やした時間を後悔することもあります。

 

けれど、将来役に立つかどうかだけで、経験の価値を決める必要もないのではないでしょうか。

 

そこで考えたこと、感じたこと、迷ったこと。結果だけを見れば無駄に思えても、その経験が自分の物事の見方や、人への接し方に残っていることがあります。

すべてを将来の成果へ変えなければならないと考えれば、それもまた、人生をコスパやタイパだけで測ることになってしまいそうです。

 

まだ意味の分からない時間にも、居場所を与える

仕事をしていても、日々を暮らしていても、

「面倒だな」

「こんなことをして、何になるのだろう」

と思うことがあります。

取り組んだからといって、すぐに意味や成果が見えるとは限りません。むしろ、今やっていることがどこへつながるのか分からない時間のほうが、多いのかもしれません。

 

それでも、意味が見えないというだけで投げ出したり、雑に扱ったりするのではなく、

「仕方がないか。さあ、やろう」

と、目の前のことに向き合ってみる。

 

その経験もまた、自分の人生に置かれた一つの点になります。

 

どの点が未来へつながるのかは、今の自分には分かりません。無駄にしか見えないものも、まだ線になっていないだけかもしれません。

もちろん、何でも我慢して続ければよいという話ではありません。自分にとって必要のないことを手放す判断も、ときには必要です。

 

ただ、今すぐ役に立つか、すぐに成果が出るかという物差しだけで、目の前の経験を無駄と決めつけない。

豊かさとは、人生から無駄をなくすことではなく、まだ意味の分からない時間にも居場所を与えることなのではないでしょうか。

 

あなたがこれまで歩いてきた道の中にも、当時は意味が分からなかったけれど、今の自分につながっている経験はありませんか。

すぐには見つからなくても大丈夫です。

人生の点は、ずっとあとになってから、静かにつながることがありますから。

 

人生の点を、少し違う角度から眺めてみませんか

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