2026年9月18日、日本銀行は政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げました。
一般的に考えれば、日本の金利が上がると円が買われやすくなり、円高につながる要因になります。
ところが、実際に起きたのは反対でした。
日銀の利上げ後、円はドルに対して下落。一時は1ドル=158円台まで円安が進みました。
その動きを見たとき、私は、
「そうだよね。でも、なぜなんだろう」
と思いました。
円安になったこと自体には、それほど驚かなかったのです。
というのも、
その2日前には米国のFRBも政策金利を0.25%引き上げていたからです。
FRBは9月16日、政策金利を3.50〜3.75%から3.75〜4.00%へ引き上げました。
日本だけが金利を上げるのであれば、日米の金利差は縮まります。
しかし今回は、米国も日本も0.25%ずつ上げました。
それなら、円安方向へ動いても不思議ではない。
でも、もう一つ疑問が残りました。
その前まで、なぜ円は買われていたのだろう
日銀の会合を前に、円はむしろ上昇(円高方向へ)していました。
背景の一つに、日銀がこれまでより速いペースで利上げするのではないか、という期待がありました。
また、米国のベッセント財務長官も、円安への対応をめぐり、日本の金融・財政政策について発言を続けていました。
つまり市場では、日銀が利上げを発表する前から、
「日本の金利はもっと上がるかもしれない」
という期待が広がり、先に円が買われていたと思われるわけです。
そして9月18日。
日銀は予想どおり0.25%利上げしました。
ただし、決定は7対2。
利上げに賛成した7人に対して、反対は2人。米国のFRBが12対0の全会一致だったのとは違います。
日銀は今後も経済や物価の状況に応じて政策金利を引き上げていく姿勢を示しています。
一方、市場では2人の反対票などから、この先どこまで利上げが進むのかについて慎重な見方も広がりました。
その結果、日銀が利上げしたにもかかわらず、円は売られました。
市場が見ていたのは、「その先」だった
ここが、今回の動きを考えていて私があらためて面白いと思ったところです。
「日本が利上げした」
というニュースだけを見れば、
金利が上がる
↓
円が買われる
↓
円高になる
と考えたくなります。
この考え方そのものが間違っているわけではありません。
ただ、市場に参加している人たちは、そのニュースが発表されてから初めて考えるわけではありません。
「おそらく利上げするだろう」
と予想すれば、その前から円を買う人もいます。
そして実際に利上げされたときには、
「利上げしたかどうか」よりも、
「これからさらに利上げするのか」
「予想していたより強い内容だったのか、弱い内容だったのか」
へ関心が移っていることがあります。
市場ではよく「織り込み」という言葉を使います。
少し難しく聞こえますが、
みんなが予想していることは、実際に発表される前から価格に反映されていることがある
と考えると、少し分かりやすいかもしれません。
今回、日銀の利上げそのものは市場でかなり予想されていました。
一方の米国では、FRBが利上げしただけではなく、この先も追加の利上げが行われる可能性が意識されています。
つまり市場は、
「日本も米国も利上げした」
という現在の出来事だけではなく、
「この先、どちらの金利がどう動きそうなのか」
まで見ていたことになります。
株も金も、単純な公式では動かなかった
今回、為替以外の市場でも、教科書どおりとは言い切れない動きがありました。
一般的には、金利が上がると株式には逆風になりやすく、ドル高は金(ゴールド)にとって重荷になりやすいと考えられます。
ところが同じ週、ITやテクノロジーなどのハイテク企業が中心のナスダックは週間で上昇し、金や銀(シルバー)も週後半に反発しました。ビットコインも8万ドル台を回復しています。
だからといって、経済の基本的な考え方を知ることが無駄なわけではありません。
むしろ、
「金利が上がると、どんな力が働きやすいのか」
という基本を知っているからこそ、
「今回は、なぜ違う動きになったのだろう」
と考えることができます。
基本は、市場を見るための大切な材料です。
でも、その基本だけでは説明できないことも起きる。
今回の動きは、そのことをよく表しているように思います。
一本の矢印だけでは、見えないものがある
市場では、いくつもの要因が同時に動いています。
だから、一つのニュースだけを見て、
「こうなったから、次はこうなる」
と決めつけるのは難しい。
今回の日米の利上げを見ていて、私はそのことをあらためて感じました。
「日本が利上げしたのに、なぜ円安になったんだろう」
そんな一つの「なぜ?」から調べてみると、金利差だけでなく、市場が何を予想していたのか、その先をどう見ているのかまで少しずつ見えてきます。
経済ニュースというと難しく感じますが、最初からすべて分かる必要はありません。
分からないことに出会ったとき、
「なぜ、思っていた動きと違ったのだろう」
と一度立ち止まってみる。
そこから少しずつ見えるものを増やしていけばいいのだと思います。
ニュースを見たとき、してはいけないことは何だろう
今回のようなニュースを見たとき、投資している人なら、ドルを売って円を買ったほうがいいのか、すでに利益が出ている株を早く売ったほうがいいのか、と考えるかもしれません。
あまり投資慣れしていない人なら、どうしたらいいの? と、迷うかもしれません。
でも、多くの人にとって、もっと身近な影響があるように思います。
私がまず気をつけたいのは、一つのニュースだけを見て、必要以上に不安になることです。
「また物価が上がるのではないか」
「これから生活がもっと苦しくなるのではないか」
「老後のお金は大丈夫だろうか」
そうした不安から、本当は必要なお金まで使えなくなったり、趣味や娯楽など楽しみに使っていたお金まで削ってしまったりすることもあります。
もちろん、家計を見直すことや将来に備えることは大切です。
でも、それと、不安に押されて生活を小さくしてしまうことは、少し違う気がします。
では、経済ニュースを見たときに、何を確認すればいいのでしょう。
今回の話だけでも、
「そのニュースは、すでに予想されていなかったか」
「市場は今ではなく、その先を見ていないか」
「同時に、ほかの材料が動いていないか」
という見方があることを改めて知りました。
こうしたことは、一度覚えれば終わりではありません。
経済も市場も、世界の状況によって変わり続けます。
だから私自身も、ニュースを見るたびに、
「これはどういう意味なんだろう」
と気になったことは一つずつ調べています。
市場を当てられるようになるためではありません。
ニュースを見て必要以上に不安にならず、自分のお金について、自分なりに考えられるようになるためです。
少しずつ知ることが増えれば、
「今すぐ何かしなければ」
ではなく、
「もう少し見てから考えよう」
という選択肢も持てるようになります。
これは、わからないからとりあえず放置するのとは違います。
お金や経済のことは、生活に直結する大切なことだけど、なんだか難しい。
そう感じる人は少なくないと思います。
私だって、今でも「難しいな」「ややこしいな」「なんでなんだろう」と思うこともばかりです。
最初は、「なんでこうなるの?」と疑問に思うだけでもいい。そう思い続けることがやがて理解に繋がります。
疑問を理解に繋げるために
メルマガ「葡萄の館からの手紙」では、金利や為替、投資、お金の使い方、資産を増やすことや守ること、そして時には私の好きなワインを絡めながら、お金のことを題材に発信しています。
金融講座のように、難しい言葉をたくさん覚えるための手紙ではありません。
ニュースや身近な出来事をきっかけに、
「これはどういうことなんだろう」
「自分のお金なら、どう考えればいいのだろう」
と、一緒に考えていく内容です。
読み続けていくうちに、ニュースを見たときに、
「もう少し、ここも見てみよう」
と思える材料が一つずつ増えていく。
そして、必要以上に不安に振り回されるのではなく、自分なりの理由を持って、お金について選べるようになる。
そんな手紙になっていますので、よかったら受け取ってくださいね。
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