S&P500は、2026年に入ってからも、値を下げる場面を挟みながら年初の水準を上回っています。
9月21日には7,764.70まで上昇し、過去最高値に再び近づきました。
NISAでS&P500やオールカントリーなどを積み立てている人の中には、
「ずいぶん利益が増えた」
という人も多いのではないでしょうか。
積み立ててきた100万円が120万円、150万円になっている。
うれしいことですね。
でも、ここで一つ考えてみてほしいことがあります。
含み益も、まだ値下がりのリスクに晒されている。
ということです。
「利益が出ている」と「利益を手にした」は少し違う
たとえば、300万円をインデックス投資で運用し、それが450万円になったとします。
150万円の含み益です。
すると、
「300万円の元本に、150万円の利益が増えた」
と考えたくなります。
もちろん、それは間違いではありません。
ただ、そのまま運用を続けている限り、450万円すべてが値動きの影響を受けています。
仮にそこから20%下落すれば、450万円は360万円になります。
150万円あった含み益は、60万円まで減ることになります。
反対に、さらに上昇すれば450万円はもっと増えるかもしれません。
つまり含み益は、すでに自分の資産ではありますが、確定して値動きから切り離されたお金ではないのです。
NISAだから値下がりしないわけではない
少し混同している人もいるように感じるのですが、
NISAは、得られた利益などを非課税にするための制度です。
投資したお金の元本を守ってくれる制度ではありません。
だから、置きっ放しにして安心というものではないのです。
NISAの中でS&P500やオールカントリーなどのインデックスファンドを持っているなら、その価格は市場の動きによって上がったり下がったりします。
大切なのは、
どのくらいの値動きを受け入れることができるのかを、自分自身が知っていることです。
待っていれば、いつかは上がる?
インデックス投資について、
「一時的に下がっても、長く持っていればまた上がる」
「下がったときも積み立て続ければいい」
という話を聞くことがあります。
たしかに、20代や30代で、これから20年、30年と運用を続けられる人にとっては、時間が大きな味方になります。
大きく下がったとしても、その後の回復を待つ時間があります。
下がった時期にも積み立てを続けることで、安い価格で買い増していくこともできます。
でも、50代、60代になってくると、少し事情が変わってきます。
たとえば60歳で、老後のために貯めてきた1,000万円をインデックス投資で運用していたとします。
そこから30%下落すれば、700万円になります。
700万円を再び1,000万円に戻すためには、約43%の上昇が必要です。
若いころなら、回復まで時間がかかっても待つことができるかもしれません。
しかし50代、60代になると、その間に生活費や旅行、住宅の修繕、家族のためのお金など、実際にその資産を使う時期がやってくる可能性が高くなります。
市場が下がっているときにお金が必要になれば、
「上がるまで待とう」
とは言っていられないこともあります。
値下がりしたインデックスファンドを売って、お金を使わなければならなくなるかもしれません。
退職後など、資産を取り崩し始めた時期に大きな下落が起こると、その後の資産寿命に大きく影響することがあります。
これは「シークエンス・オブ・リターン・リスク」と呼ばれる考え方でも知られています。

大切なのは、あと何年待てるか
もちろん、
「50代、60代になったらインデックス投資をやめた方がいい」
という話ではありません。
60歳でも、そのお金を20年以上使う予定がない人もいるでしょう。
逆に30代でも、数年後に住宅購入などで使う予定のお金なら、大きな値動きに晒しておくことには慎重になる必要があります。
大切なのは年齢そのものより、
そのお金を使うまで、あと何年待てるのか。
そして、
大きく下がったとき、本当に回復するまで待てるのか。
ということです。
インデックス投資は、長期の資産形成に使いやすい方法です。
でも、
「これ一つを持っておけば、あとは何も考えなくていい」
とまでは言えません。
資産が増え、使う時期が近づいてきたら、
増やすことだけではなく、増えたお金をどこまで値動きに晒し続けるのか
も考える必要が出てきます。
今のS&P500は高いのか
そこで、現在のS&P500がどのくらいの水準にあるのかを見てみましょう。
株価の高さを考えるときによく使われる数字に、PERとCAPE(シラーPER)があります。
名前は難しそうですが、考え方はそれほど難しくありません。
ここで見る予想PERは、
企業がこれから稼ぐと予想されている利益に対して、株価が何倍まで買われているか
を見る数字です。
たとえば、1年間に100円の利益を生むと予想されているものが2,000円で買われていれば、PERは20倍です。
一方のCAPEは、過去10年間の利益を物価調整したうえで平均し、現在の株価水準を見る数字です。
好景気で一時的に利益が大きく増えたり、不景気で大きく減ったりする影響をならして、
「長い目で見ると、今の株価はどのくらいの水準なのか」
を見るために使われます。
簡単に言えば、
予想PERは、これからの利益を見ながら考える。
CAPEは、過去10年の利益をならして考える。
という違いです。
2026年夏のS&P500の12か月先予想PERは、おおむね20倍前後でした。
FactSetでは7月31日時点で19.6倍で、過去10年平均の19.0倍を少し上回る程度でした。
一方、CAPEは2026年9月18日時点で約40.9倍となっています。
長期的に見ると、かなり高い水準です。
では、
「S&P500は高すぎるから危険だ」
ということなのでしょうか。
そう単純ではありません。
PERやCAPEは「天気予報」ではなく「気温計」
私は、PERやCAPEは天気予報というより、気温計に近いと考えると分かりやすいと思います。
気温計を見て35度なら、
「今日はかなり暑いな」
ということは分かります。
でも、その数字だけを見て、
「明日の午後には雷雨になる」
とは分かりません。
PERやCAPEも同じです。
数字が高ければ、
「利益に対して、株価が高く評価されている」
という現在地を知る手がかりにはなります。
でも、
いつ下がるのかを教えてくれる数字ではありません。
PERやCAPEが高いから、すぐ暴落するとは限りません。
反対に、数字がそれほど高くないから安心、とも言えません。
つまり、
「今は高そうだから全部売ろう」
という話をしたいわけではないのです。
上がった今だから、リスクを見直す
考えてみたいのは、
相場がこれから上がるのか、下がるのか
ではありません。
自分が今、
どのくらいのお金を値動きの中に置いているのか
ということです。
含み益がある状態でも、元本と合わせて資産全体が値動きの中にある。
それを理解したうえで、
「このまま全部を運用し続けたい」
と考えるのであれば、それも一つの選択です。
一方で、
「ここまで増えたのだから、一部は値下がりの影響を受けにくい場所へ移したい」
と考える人もいるでしょう。
大切なのは、相場を当てることではありません。
自分がどれだけのリスクを取っているのかを知り、そのリスクが今の自分に合っているかを考えることです。
「そのまま持つ」以外にも選択肢はある
インデックス投資で利益が増えてきたとき、
「このまま持ち続けるか、全部売るか」
という二択で考える必要はありません。
一部だけ利益を確定することもできます。
現金などへ移す方法もあります。
値動きの異なる資産へ分けることもできます。
また、一定の条件下で投資元本が保全され、下方向のリスクを限定しながら上方向への伸びを享受できる商品もあります。
為替の影響を受けるものもあれば、途中で自由に換金しにくいものもあります。
だからこそ、
「何に替えれば安全か」を探すのではなく、それぞれの選択肢がどんな特徴とリスクを持っているのかを知ること
が大切だと思っています。
積み立て投資では、
「何を買うか」
「毎月いくら積み立てるか」
については、たくさんの情報があります。
でも、
積み立てたお金が増えたあと、どうするのか。
について考える機会は、意外と少ないのではないでしょうか。
以前の記事では、この「増えたあと」に焦点を当てて、利益が出たお金に次にどんな役割を持たせるのかを考えました。(→ 積み立てた後、利益が出たお金をどこへ置くのか)
増やすことだけではなく、
増えたあとの置き場所も考えておく。
特に、これから資産を使う時期が少しずつ近づいてくる50代、60代では、そんな視点も持っておきたいところです。
メルマガ「葡萄の館からの手紙」では、
インデックス投資などで増えたお金を、そのまま持ち続ける以外にどんな選択肢があるのか
についても、できるだけ分かりやすくお伝えしています。
どんな選択肢があり、それぞれにどんな特徴やリスクがあるのかを知ったうえで、
自分のお金を、自分の軸で選べるようになることが重要なんですね。
「このまま置いておく以外には、どんな方法があるのだろう」
と少しでも気になったら、メルマガ「葡萄の館からの手紙」を受け取ってみてください。

