ボルドーのプリムール市場について、「前年より販売は少し回復した」というニュースを目にしました。
「少し」という表現が印象的で、
爆発的に売れたわけでもなく、市場が完全に回復したわけでもありません。
それでも、少しずつ動き始めている。
そんな慎重な空気が伝わってきます。
私はこのニュースを見て、「市場が回復したから買おう」と思ったわけではありません。
むしろ、自分が以前から大切にしてきた考え方を、改めて確認するきっかけになりました。
制度そのものが問われているプリムール
ここ数年、ボルドーワイン市場は決して順風満帆ではありません。
世界的な金利上昇や景気への不安、消費者の価値観の変化など、さまざまな要因が重なり、プリムール市場は大きく落ち込みました。
単に「少し売れない」というレベルではありません。
「この仕組みは、この先も続くのだろうか。」
そんな声が業界から聞こえてくるほど、プリムールという制度そのものが問われる厳しい状況が続いていました。
だからこそ、「販売は少し回復した」というニュースは、小さな数字以上の意味を持っているのかもしれません。
熱狂の時代ではなくなった
2025年ヴィンテージは、品質の高さが期待されています。
それにもかかわらず、市場は以前のような熱狂には至りませんでした。
これは少し意外でした。
しかし考えてみれば、それだけ買い手が成熟したということなのかもしれません。
以前なら、「出来が良い」と聞けば飛びつく人も多かったでしょう。
でも、今は違います。
価格は妥当なのか。
熟成したバックヴィンテージと比べて魅力はあるのか。
保管コストまで含めて納得できるのか。
そんなふうに、自分の基準で判断する人が増えてきたように感じます。
私は、この変化を健全なことだと思っています。
私が見ているのは、今年ではなく10年後
プリムールは、数か月後の値動きを狙うための仕組みではありません。
数年、あるいは10年以上という時間をかけて、ワインが熟成し、その価値を育てていくものです。
だから私が気になるのは、
「今年どれだけ売れたか」
ではなく、
「10年後、このワインを欲しいと思う人がいるだろうか」
ということです。
その問いに納得できるなら、市場が今どれほど盛り上がっているかは、私にとってそれほど重要ではありません。
市場が静かな時期だからこそ、落ち着いて選べる
ワインも投資も、多くの人が欲しがる頃には価格も期待も高くなります。
一方、市場が静かな時期は、周囲の熱気に流されず、自分の基準で選びやすい時期でもあります。
もちろん、すべてのワインが価値を高めるわけではありません。
だからこそ、生産者やヴィンテージ、そのワインが持つ歴史や評価を調べ、自分なりに納得した一本を選ぶことが大切で、その時間もプリムールの楽しさの一つだと考えています。
私がプリムールを買う理由
私がプリムールを買う理由は、資産価値だけではありません。
もちろん、価値が高まれば嬉しいと思っています。
でも、それだけではないのです。
もし思っていたほど価値や価格が上がらなかったとしても、自分で選び、何年も大切に保管してきた一本を、大切な人と一緒に開ける時間は、決して無駄にはならないと思っています。
「あの年のプリムールだったね。」
「何年待ったんだっけ。」
そんな会話をしながらグラスを傾ける時間にも、私は大きな価値を感じます。
プリムールは、未来のワインを予約する仕組みです。
でも私にとっては、それだけではありません。
未来の楽しみや、手放すまでの大切な時間も一緒に予約しているような感覚があります。
まとめ|未来を楽しみに待てることも、一つの豊かさ
市場は、いつも期待どおりに動くわけではありません。
だからこそ、短期的なニュースに振り回されるのではなく、自分が何を大切にしたいのかという基準を持つことが大切なのだと思います。
未来を楽しみに待てるものが一つあるだけで、人は少し豊かになれる。
資産として価値が育てば、それはもちろん嬉しいことです。
もし思うように価値が上がらなかったとしても、その一本を誰かと一緒に開ける時間は、きっと私にとって十分価値のあるものです。
私は、
そのどちらも自分で選べる状態でいたいと思っています。
だから私は、市場が回復したからプリムールを買うのではありません。
10年後の自分が、「あの時、この一本を選んで良かった」と思える未来を楽しみに、これからもプリムールと向き合っていきたいと思います。
