払っても価値があるコストとは? 投資とワインから考えてみた

投資とお金


投資について学んでいると、

「できるだけコストの低い商品を選びましょう。」

という話をよく耳にします。

 

確かに、同じような運用成果を期待できるなら、コストは低い方が有利です。長い時間をかけて運用するほど、わずかな違いが大きな差になることもあります。

だから、金融商品を選ぶときにコストを確認することは大切です。

 

でも最近、ある金融商品について調べていて、少し違ったことを考えました。

コストを見るとき、「いくらかかるのか」と同じくらい、「そのコストで何を得ているのか」まで考えてみる。

そうすると、商品の見え方も少し変わるのではないか。

そんなことを考えていたら、ワインの保管料のことが頭に浮かびました。
 

ワインの保管料は、何のために払うのか

私は、長期で保有するワインの一部をワイン保管サービスに預けています。

そのサービスには、当然、保管料がかかります。

自宅で保管すれば、この費用を抑えることはできます。

 

一方、長い時間をかけて熟成させるワインにとって、どこで、どのように保管されてきたかは非常に大切です。

適切な温度や湿度。安定した保管環境。そして、適切な環境で保管されてきたという履歴。

将来、自分で飲むにしても、誰かに譲るにしても、あるいは売却するにしても、そのワインの状態や信頼を守ることにつながります。

 

だから私は、保管料を、

ワインの時間と価値を守るためのコスト

とも考えています。

 

いくら払うのかと同じくらい、そのコストによって何を得ているのかにも目を向けたい。

金融商品にも、少し似たところがあるように思います。

同じS&P500でも、違う「器」がある

最近、S&P500を対象とした元本確保型ファンドについて調べる機会がありました。

期間は6年間。米ドル建てで、S&P500の値動きをもとにリターンが決まります。

 

特徴的なのは、満期時に元本100%を確保する仕組みを持っていることです。

もちろん、発行体や元本確保を保証する金融機関に信用上の問題が起きないことなどが前提になります。

 

今回、元本確保を保証するBNP Paribasは、世界的格付け機関である Moody’s、Fitch、S&PからそれぞれA1、AA-、A+の格付けを受けています。

 

馴染みのない海外金融機関に少し不安を感じる方もいるかもしれませんが、格付けという物差しで見ると、三菱UFJ銀行や三井住友銀行など、日本の大手銀行と同程度、あるいはそれ以上の高い信用力を評価されている金融機関です。

 

満期時のリターンは、6年間に24回観測するS&P500の平均騰落率に、120%の参加率を反映して計算します。

平均騰落率がゼロ以下の場合は、満期時に元本100%が返る設計です。

つまり満期まで持てば、(ドル建て評価で)損しない ということです。

 

ここで、

「平均騰落率? それなら、普通にS&P500の投資信託を買った方がいいのでは?」

と思う方もいるでしょう。

 

「どちらが儲かるか」だけでは見えないもの

S&P500が6年間、順調に上昇し続けたとします。

その場合は、S&P500へ直接投資する投資信託の方が、大きなリターンを得られる可能性があります。

 

元本確保型ファンドでは、満期時のS&P500だけを見るのではなく、途中の24回の観測値を平均するからです。

 

S&P500の上昇をできるだけそのまま受け取りたい。

そんな目的なら、低コストのS&P500投資信託は分かりやすい選択肢です。

 

一方、元本確保型では、上昇の取り方に一定の条件が加わる代わりに、満期時の下方向に「元本100%」という床を設けています。

 

同じS&P500を対象にしていても、

成長をできるだけ大きく取りにいくこと。

下方向を限定しながら、成長にも参加すること。

 

それぞれ、金融商品に持たせる役割が違います。

直接投資よりリターンが低かったという結果だけを見れば、コストが気になるかもしれません。

でも、その違いによって下方向のリスクを限定する仕組みを得ているのであれば、見方も変わってきます。

 

単に、コストは無駄 と切り捨てるだけでなく、

何を手放す代わりに、何を得ているのか。


そこまで見て比べたいと思うのです。

「売る」と「待つ」という二つの選択肢

今回の商品には、もう一つ興味深い使い方があります。

 

満期は6年後ですが、途中で売却することもできます。

途中の売却価格は、S&P500だけでなく、金利、オプション価値、市場のボラティリティ、残存期間など、さまざまな要素を反映して決まります。

その価格が十分に上昇したところで利益を確定し、増えた資金を次の元本確保型ファンドへ移していく。

こうした方法を「ラチェット運用」と呼びます。

 

例えば100で投資したものを130で売却し、その130を次の元本確保型ファンドへ再投資する。

うまく利益を確定して、その資金を次の元本確保型ファンドへ再投資できれば、元本確保の対象額を段階的に引き上げていくことができます。

 

一方、途中価格が購入時を下回っているのであれば、無理に売却せず満期まで待つという選択肢があります。

 

ただし、そのためには一つ大切な前提があります。

投資に使うのは、当面使う予定のない余裕資金であることです。

 

私自身、使う予定のあるお金まで投資に回してしまい、相場が下落したときに、損失が出ていても現金化せざるを得なくなった経験があります。そして、同じような状況になった方も、これまで何人も見てきました。

待てば回復するとは限りません。それでも、余裕資金で投資していれば、「今、売らなければならない」という状況を避けることはできます。

 

投資では、「待てること」そのものが一つの強さになる。

今回のような元本確保の仕組みも、満期まで待てる資金でやるからこそ、その特徴を活かすことができます。

ドル資産を持つ「器」として考えてみる

ここで、もう一つ視点を加えてみます。

今回の商品は、

総資産の一部を長期的にドルで持つための「器」

として見ることもできます。

 

日本で暮らしていると、収入も預金も日々の支払いも、自然と日本円に偏りやすくなります。

ドル資産を持つ方法にも、ドル預金、米国債、S&P500などの米国株式、そして今回のようなドル建ての元本確保型商品。

それぞれに得意とする役割があります。

 

成長を求めるのか。

安定性を重視するのか。

流動性を大切にするのか。

下方向のリスクを限定したいのか。

 

同じドルを持つにしても、そのお金に何をしてもらいたいかによって、選ぶ「器」は変わります。

コストを払うことで、何を得ていますか?

ワインの保管料と金融商品のコスト。

性質は違っても、私の中では一つの考え方でつながりました。
 

「そのコストによって、私は何を得ているのだろう。」

そして、もう一つ。

「それは、自分がこの資産に持たせたい役割と合っているだろうか。」

コストを抑えることは大切です。

そのうえで、安さだけでは見えないものにも目を向けてみる。

 

投資も、ワインも。

価格だけを比べれば、見えなくなる価値があります。

だからこそ私は、「いくらかかるか」と同じくらい、「なぜ、それを選ぶのか」を大切にしたいと思っています。

 

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