金ETFに100億ドル流入。それでも運用資産残高が減ったのはなぜ?

投資とお金

「金(ゴールド)が下がった。もう上昇相場は終わりなのかな……」

価格が大きく下がると、そんなふうに感じることがあります。

 

2026年9月、ドル建ての金価格は月間で8.5%下落しました。

ところが、同じ月に世界の金ETFには約100億ドルが純流入し、保有する金の量も過去最高を更新しています。

一方で、運用資産残高は7%減りました。

 

価格は下がった。お金は入った。それでも資産残高は減った。

一見すると、つじつまが合わないように見えます。

でも、それぞれの数字が何を表しているかを分けてみると、この組み合わせは不思議ではありません。
 

金が下がっても、資金は入っていた

World Gold Council(世界黄金協会)が2026年10月7日に公表した資料によると、9月の世界の金ETFは、次のように動いていました。

指標2026年9月の動き
金価格(ドル建て)前月末比8.5%下落
ETFへの資金の出入り約100億ドルの純流入
ETFの金保有量67トン増加し、過去最高の4,256トン
運用資産残高(AUM、ドル建て)前月末比7%減の5,740億ドル

ちなみに金ETFとは、金価格への連動を目指す上場商品のことです。米国のSPDR Gold Shares(GLD)やiShares Gold Trust(IAU)などが代表例で、証券口座を通じて売買できます。


今回の資料が集計しているのは、現物の金を保有するETFなどの商品です。

「純流入」は、入ったお金から出ていったお金を差し引いたもの。約100億ドルの純流入という数字は、世界全体では、出ていったお金より入ってきたお金の方が多かったことを示します。

価格が下がった月にも、ETFを通じて金への投資を増やす動きがあった。

値段だけを見ていると、見落としやすい事実です。

持っている量が増えても、資産総額は減る

では、お金が入っているのに、なぜ運用資産残高は減ったのでしょうか。

AUMは「Assets Under Management」の略で、運用している資産の総額です。現物の金を保有するETFでは、保有量に加えて、金の値段にも大きく左右されます。

たとえば、1個1,000円のものを10個持っていたとします。資産総額は1万円です。

そこから1個買い増して11個になっても、1個の価格が800円に下がれば、資産総額は8,800円になります。

持っている個数は増えたのに、資産総額は減る。


9月の金ETFでも、これと似たことが起きました。金の保有量は増えましたが、価格下落の影響が上回り、ドル建ての資産残高は減少しています。

「資産残高が減った」と聞いたときは、お金が出ていったのか、持っている資産の値段が下がったのかを分けて見る必要があります。

なぜ金価格は下がったのか

ETFにお金が入っていても、金価格は下がることがあります。金の価格には、ETF以外の市場の動きも影響するからです。

世界黄金協会は、9月の価格下落について、米国の長期金利上昇やドル高、先物市場でのポジション縮小が重荷になったと分析しています。

実際、COMEXという先物市場では、買い持ちから売り持ちを差し引いたポジションが、前月から金換算で約100トン減りました。金の値上がりを見込むポジションが、差し引きで縮小していたわけです。


ETFには資金が入る一方で、先物市場では強気のポジションが減っていた。

同じ金を扱っていても、市場ごとに異なる動きがあったのです。

金利や為替も含めて市場を見る視点については、「株価よりも金利を見ると、世の中の流れが見えてくる」でも考えています。

下落を、買う機会と捉えた人もいた

価格が下がれば、「以前より買いやすくなった」と考える人もいます。

世界黄金協会は、インドの金ETFへの流入について、値下がりを機会と捉えた買いや、資産を分散する需要などが支えた可能性を挙げています。

ただし、世界全体の約100億ドルの純流入を、すべて「下がったから買った」で説明することはできません。投資家一人ひとりの理由までは、この数字から分からないからです。


確認できるのは、価格が下がるなかでも、ETFへの資金流入が続いたことです。

ワインでも、価格が下がることで買い手が動き始める場合があります。「ワインは、いくらなら『買おう』に変わる?|ラフィット2016とマッセート2023から考える」では、その関係を取り上げました。

「下がった」の次に、もう一つ見る

金価格が8.5%下がったという数字は、目を引きます。

でも、そこから「金への関心が薄れた」と考える前に、ETFにはお金が入っていたという数字を見ると、少し違った景色が見えてきます。

もちろん、ETFへの流入だけで、これから価格が上がると判断できるわけでもありません。

今回の数字から受け取れるのは、価格の上下と、資金の出入りは分けて見ると、市場を理解する材料が増えるということです。

「価格はいくらになったのか」に加えて、「ほかの数字はどう動いていたのか」を、もう一つ見てみる。

その習慣は、株式やビットコインを見るときにも役立ちます。

すぐに売るか買うかを決める前に、「そういう見方もあるのか」と一呼吸置ける。私は、そのための材料を一つ持っておくことに意味があると考えています。


メルマガ「葡萄の館からの手紙」では、こうしたお金の動きや経済の仕組みについても、できるだけ分かりやすくお伝えしています。

仕組みが少し分かるだけでも、ニュースを見て必要以上に不安になったり、「上がった」「下がった」という動きだけに振り回されたりすることは減っていきます。

何が起きているのかを自分なりに理解し、落ち着いて考えるための材料を増やしたい方は、よければ受け取ってください。

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出典:World Gold Council(いずれも2026年10月7日公表)

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