ファインワインは誰が買っている?|米国勢の復帰から市場を見る

ワイン市場

世界では、ワインが以前ほど飲まれなくなっています。

OIV(国際ブドウ・ワイン機構)によると、2025年の世界のワイン消費量は約2億800万ヘクトリットル。前年から2.7%減少しました。

こうした数字を見ると、「世界ではワイン離れが進んでいる」と考えたくなります。

ただ、国ごとに見てみると、少し違った景色も見えてきます。

減っている世界で、増えている国もある

2025年のワイン消費量を見ると、ポルトガルは前年比5.6%増、ルーマニアは11.0%増。

日本も6.8%増えています。

ブラジルは前年の水準が低かった影響もありますが、41.9%増となりました。

世界全体では減っていても、すべての国で同じようにワイン離れが進んでいるわけではありません。

では、世界最大のワイン消費国である米国はどうでしょうか。

2025年の米国のワイン消費量は約3190万ヘクトリットル。世界最大の市場であることに変わりはありませんが、前年から4.3%減少しました。

IWSR(International Wine and Spirits Research)の調査でも、2025年の米国のワインカテゴリーの販売数量は前年から減少しています。

ここまでなら、

「世界最大の米国でも、ワイン離れが進んでいる」

と読めそうです。

ところが、ファインワイン市場へ目を移すと、少し違った景色が見えてきます。

Liv-exでは、米国勢が戻ってきた

ファインワインの国際的な取引市場であるLiv-exでは、2026年に米国勢の存在感が大きくなっています。

Liv-exの購入金額に占める米国勢の割合は、2025年平均の20.7%から、2026年第1四半期には23.3%、第2四半期には26.9%へ上昇しました。

さらに2026年には、週間の購入金額シェアが41%を超えた週もあります。

世界最大のワイン消費国で、ワインの消費量は減っている。

それなのに、ファインワイン市場では米国勢が大きな買い手になっている。

最初にこの二つの数字を並べてみたとき、少し不思議に感じました。

米国では、ファインワインを楽しむ人が増えているのだろうか。

最初はそんなことも考えました。

でも、調べていくと、この二つの数字をそのまま結びつけること自体に注意が必要だと気づきました。

「米国勢が買った」と「米国人が飲んだ」は違う

Liv-exは、私たち消費者がワインを買う通販サイトのような市場ではありません。

世界各国のワイン商などが参加するB2Bの取引市場です。

そのため、

「Liv-exで米国勢の購入シェアが26.9%だった」

という数字は、米国の市場参加者がそれだけ購入したという意味です。

そのワインを米国の消費者が飲んだことを意味するわけではありません。

つまり、

「どこの人がワインを飲んでいるのか」

と、

「どこの事業者がファインワインを買っているのか」

は別の数字です。

この違いを意識すると、2025年から2026年にかけての動きも少し違って見えてきます。

米国勢が減ったら、欧州勢が増えた?

2025年、関税をめぐる不透明感が高まると、Liv-exでは米国勢の購入が急減しました。

Liv-exによれば、関税発表直後、同市場で購入していた米国の買い手の約80%が購入を止めたとされています。

その一方で、欧州勢の2025年の購入金額は前年比48.2%増加しました。

ところが2026年になると、米国勢が再び市場へ戻ってきます。

第2四半期には、米国勢の購入シェアが26.9%まで上昇しました。

この動きを見ていると、もしかすると大きく変わったのは「誰が飲むか」ではなく、「誰が仕入れるか」だったのではないかとも考えました。

もちろん、Liv-exのデータだけでは最終的な消費者まで追うことはできないので、そう断定することはできません。

ただ、Liv-exで「米国勢が増えた」「欧州勢が増えた」という数字を、そのまま各地域のワイン消費の増減と読み替えるのは少し違いそうです。

実際、Liv-exは米国勢が戻ってきた背景として、米国のサプライチェーンが関税への対応方法を見つけ始めたことや、在庫が減ってきたことを挙げています。

その数字を見るだけでなく、その「誰」が何を表しているのかまで確認する必要がありそうです。

同じ「ワイン市場」でも、見える景色は違う

世界のワイン消費量を見ると、市場は縮小しています。

でも、前述の通り、国別に見れば、増えている国もあります。
 

米国ではワインの消費量が減っている一方、Liv-exでは米国の市場参加者による購入が増えています。

一見すると矛盾しているようですが、見ているものが違います。
 

一方は、各国でどれだけワインが消費されたと推計されるのか。

もう一方は、ファインワイン市場で、どこの事業者がどれだけ買ったのか。
 

同じ「米国」という名前が出てきても、片方は消費する人を含む市場全体を見ていて、もう片方はワインを取り扱う事業者の取引を見ています。

数字が違うというより、そもそも映している景色が違うのです。

「ワイン市場は今どうなっているのか」と考えるとき、一つの数字だけを見ていると、その向こう側にある動きを見落としてしまうことがあります。
 

数字の後ろにいる人を見る

以前の記事「ワインは、いくらなら『買おう』に変わる?|Lafite 2016とMasseto 2023から考える」では、どのワインが、どの価格なら買われるのかを見ました。

今回は、そこからもう一歩だけ視点を動かしてみました。

では、その価格で買っているのは誰なのか。

ファインワイン市場では、価格や取引額、取引量など、さまざまな数字が伝えられます。

どれも大切な情報ですが、その数字の後ろには、実際に売ったり買ったりしている人たちがいます。

 

最近、私は市場の数字を見たときに、

「ところで、今それを買っているのは誰なんだろう。」

と、もう一つ確認してみたいと思うようになりました。

では、結局ファインワインは誰が買っているのでしょう。

今回確認できたのは、2026年のLiv-exでは米国の市場参加者が大きな買い手になっているということです。

ただ、その先で誰がワインを買い、飲むのかまでは、この数字からは分かりません。

「誰が買っているのか」を調べてみたら、「誰を買い手と呼んでいるのか」まで考えることになりました。

数字だけではなく、その数字を動かしている買い手を見る。

それだけでも、ファインワイン市場の見え方は少し変わってくるかもしれません。

 

それにしても、日本でワインの消費が伸びているのは少し意外な感じがしました。

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